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前回のブログで日本一人気投票について軽く触れたんですけど、女子部門は意外でした。
1位はエトナかフロンかな?とは思っていたんですけど、まさかアサギとは…。アサギのこと忘れてたよ。
それとD4勢は全体的にもっと上かなと予想していた…。
更にD4勢の中でも一番上はデスコだろうなと思ってたんで、ちょっと意外でしたね。
ちなみに私は1フーカ2アルティナ3デスコ4ロザリ5エトナに入れさせてもらいました。
しかしアサギは、1位投票ではなくそれ以下の投票が多いんですね。
男子部門の予想は1位殿下かな~と思ってましたが、これを見るとわからんぞ…。
アクターレとか…ありえるよね。2位以下でいれる方多そうだし…。
私は1フェンリっち2ヴァルっちで入れるつもりでした。
ヴァルっちは男性票もあるから、フェンリっちに入れておこうかなと。
まぁ、つもりっていうのは、結局ヴァルっち1位にしちゃったんですよね。
だって直前に見せられた公式絵が可愛すぎるんだもん。
ヴァルっちは上位だとは思うのですが、…フェンリっちは全く読めん。
どちらも10位以内に入ってくれると嬉しい…。
……欲を言うと ヴァルっちは1位がいい!いえ、発表後の我侭は言いませんが。
それにどんな結果でも私の中でヴァルっちは世界1位ですから!
よしんば世界2位だとしても世界1位ですから!
……このネタわかってくださる方がどのくらいいるのだろう…。

そして前のめちゃくちゃなブログでも呟いたのですが、今月末にちょっとほにゃららありましてね。
昨日も開館から閉館まで図書館に篭り、書庫に潜り、調べました。……吸血鬼について!!!!
……まじで何やってんですかね自分。本当に何やってんですかね。
でもこうなっちゃったら仕方ないです。
っつぅわけで今回の追記は個人的な吸血鬼伝承まとめなのですよ。
文章力は相変わらずです。時間のある方はどうぞ…。
平賀英一郎著『吸血鬼伝承』を軸に文献を漁りました。
が、私の解釈が多分に含まれております。鵜呑みにしたらあかんです。
話半分にでも覗いていただけたら嬉しいです。
というか、中盤まで一気に飛ばすことを奨励します。


軸にする本を決めたのですが、それでも吸血鬼は大人気なので、文献も膨大と予想します。
適当に読みふけるだけでは何もまとめられません。文献の種類をざっくり分けていきましょう!
①昔話②伝説③記録や報告④創作文学。うむ。
まあ④は今回無しでしょうな。面白いですけどね。
基本的に①と②の口承文学と③の記録を追っていこうかなと思います。
わざわざ口承文学と言い直したのは、昔話も伝説も、創作文学に限りなく近いものが含まれてしまっているからです。ん?なんだこの日本語。
えーと、例えば「桃太郎」に置き換えますと、スーパーの端っこによく置いてある絵本や、本屋の児童コーナーの昔話集。あれは創作文学といたします。
口頭による無形伝承の民話や物語が記録されたものに関しては資料として扱います。
まず③は、そういった現象を信じていないまったく第三者の書いたものです。こういった資料は客観的ですが、記録者は大抵上流階級の人だったり、文化の違う人だったりするので、事実とは少し違って残されていたりするのです。
①と②は一見同じようですが、おおきな違いがあります。
昔話でも伝説でも、山姥や河童や天狗は登場するのですが、伝説はそういう異界のモノがこちらへ進入してくることに対して恐れたり悲しんだりします。
それに対して昔話は、異界のモノがこちらに来ても、それに対しては驚きません。これはヨーロッパの昔話でも日本の昔話でもそうです。
例えば、「浦島太郎」は助けた亀が突然喋りだしても何も驚きませんが、伝説の場合は、亀が人間の言葉を喋りだしたことに驚愕し、そこを人語を話す亀が現れた浜辺としてのちのちまで語り継ごうとします。
また伝説と違い昔話は、主人公の行動が中心であり、その特徴は主人公を巡って集約的にあらわれています。異人にスポットは当てられません。
「桃太郎」では、鬼が島に鬼たちがいたといいますが、その鬼たちが普段はどういう生活をして、鬼の大将はどれくらいの権力を持っていたかなどは一切語られません。
家来の犬と猿とキジもそうです。話のすじに踏み込んできたときにだけその姿がわかる、それが昔話の語り方です。
伝説は、超越的なものがこちらに飛び込んできて、そこで起こした奇跡に驚いて、それを伝えようとしているのです。昔話では奇跡は当たり前のことなので、そこに驚きはしません。
「尻鳴りしゃもじ」では、長者の娘が驚いたのは尻が鳴ったということで、そのしゃもじが尻を鳴らすという奇跡的な能力を持っていることは誰も気にしませんね。
とこのように昔話と伝説は全く別のものなので、混合して考えません。

とりあえず吸血鬼像に大きく貢献したという事件を見てみました。
1725年にセルビアのキシローヴァ村で起きたペーター・プロゴヨヴィッツの事件です。
カルメの書から、どうぞ。


しかしラウフトが挙げているもっとも驚くべき例はピエール・プロゴヨウィツという名の男の場合で、この男はハンガリアのキソローヴァという村に埋葬されたが、それから十週間ほどたったある夜、数人の村人のところへ彼らが眠っている間に現れて頸を締めた。
彼らは二十四時間以内に死んだ。
こうして八日間に老若あわせて九人が悲業の死を遂げた。
このプロゴヨウィツの後家は、夫が死後靴をくれとせがみにきたのがあまり怖ろしかったので、キソローヴァを離れて他の土地に隠れ住むことにしたと申し立てた。
こうしたようなわけで、村人たちはプロゴヨウィツの屍体を地下から掘り出して焼却して禍を免れる覚悟を決めた。
彼らはハンガリアのグラディスカ地方の統治に当たっていた皇帝の役人とその地の主任司祭に申請して、ピエール・プロゴヨウィツの屍体を掘り出す許可を求めた。
役人と主任司祭は許可を出し渋っていた。
しかし農民たちは、この男の屍体を掘り出す許可が適えられないのなら、この男が本物の吸血鬼であることは間違いないのだから、自分たちはこの村を捨ててどこか暮らして行けるところに引き移るほかはないと宣言した。
この報告を書いた皇帝の役人は、脅かしてもすかしても彼らを引き留めることはできないと見てとると、グラディスカの主任司祭とともにキソローヴァ村に赴き、ピエール・プロゴヨウィツを掘り出してみると、その身体にはなんらの悪臭もなく、鼻の先がすこしばかり萎びていささか乾いているほかは、五体満足で、さながら生けるもののようだった。
髪と髭は濃く、一度抜け落ちた爪はまた生えてきていた。
もとの皮膚は死んだように白っぽくなっていたが、その下には新しい、健康で自然な光沢の皮膚が見えていた。
手足も生きている人間の場合にすら望みうるかぎりの完璧なものであった。
村人たちは口のなかに新鮮な血さえ発見した。
そのために人々はこの吸血鬼は殺した人たちの血を吸っていたのだと考えたのだった。
皇帝の役人と主任司祭はこれらのことどもを克明に調査し、立ち合った人々が新たな憤激に燃え立つのを見ると、しだいにこの男がその同郷人の死亡の真の原因であると考えるようになり、ただちに配下の者に尖のとがった杭を探しに走らせ、男の胸を刺し貫くと、プロゴヨウィツは、傷口からも、鼻からも、口からも、真新しい鮮紅色の血をどっとばかり夥しく迸らせた。
名を言うことを憚るある部分からも何やらある種のものを出した。
それから農民たちはその身体を薪の山の上に積み上げて灰にしたのだった。


胸に杭とか言われちゃうとヴァルっちを思いだします。閣下の杭は一体どういう経緯で刺されたものなのかとても気になります。私、気になります!

一度死んだ後で、墓から起き上がり親族や隣人を襲う死者。
18世紀の吸血鬼文献は、まだ文学的ではなく、神学的、医学的関心によるものだったそうです。
肉体的な存在が生死の境を越えるという現象はその当時は哲学的、神学的な問題であったわけです。
余談ですが、人が神になるには一度死んで復活するという過程を越える必要があるのですよね。
ということをどっかで読んだような~。柳田國男だったかな…。
死んでから復活した人ってのはもう人ではなく、畏れるべき存在なんですね。
更に話が逸れますが、神隠しってあるじゃないですか。
あれの特徴として、神隠しにあった者はまた永久にいなくなる前に一度親類知音に姿を見せるのですよ。
でも、そこで親類たちは引き留めないんです。歓迎すらしない。遠野物語のサムトの婆とかそうです。
神隠し、異界に連れ去られた彼女らはもう異人扱いなのです。死の世界も異界です。
…と話を戻しましょう。

バルカンや東欧の様々な地域で、キシローヴァ村のような事件が起きた、または起きると信じられていたようです。
そういう怪異は色々な呼び方をされていましたが、その性質や行動が似通っています。
それらを「吸血鬼」と名づけ、その上でそういう「吸血鬼」はその土地の言葉でなんと言われるか、その名称で呼ばれる怪異はどのようなものか考えます。
つまり、そもそも「吸血鬼」は人間の心や信仰のうちにあるもので、「犬」か「猫」のように何か自明のものとして、ルーマニアではstrigoi、セルビアではvukodlak呼ばれる、と単語帳を作るわけでなく、その土地の言葉で「吸血鬼」と呼ばれる怪異が何を意味するのか検討します。

では「吸血鬼」が何かというと、「生ける死体」とします。一度死亡して、墓から再び肉体のまま現れ(亡霊ではなく)、人々を死に引き込む死者です。
吸血は魅力的で重要な特徴なのですが、必要条件でも十分条件でもありません。
血を吸う妖怪には怪鳥ストリクスや女怪ラミアなどがいますが、吸血行動だけでは「吸血鬼」に含まないことにします。
逆に血は吸わなくても、死や災いをもたらす「生ける死体」は「吸血鬼」の一種とします。

吸血鬼ブームを引き起こしたキシローヴァ村の事件はセルビアで起きました。
「吸血鬼」がセルビア人の間では非常にポピュラーなものであったらしく、「吸血鬼」を指す名称も多いです。
vukodlak、vampir、tenacなどなど。さっきあげたヴコドラクが人狼が語源というのは狼vukと毛皮dlakaから成るためで、tanacは墓を意味するtenarから。
kosac、kosicaなんて名称もありまして、これは大鎌kosaつまり死神から来ています。
ヴーク・カラジッチという方の『セルビア語辞典』のヴコドラクの項はフォークロアの研究が





「……いつまでって、まだ始まってもいないだろう。ここまでは注意事項だ」
「はー!?ありえないっつーの!もう飽きたわよ!!ねーヴァルっち!」
「む?」
「こんなん調べたってなんの意味もないじゃん!珍しくフェンリっちが図書館に篭ってると思ったら!」
「より閣下のことを理解できると思ってな。さて、では続きを」
「ちょちょ、待ってよ!!このままずーっと吸血鬼の名前の語源だけ挙げてくわけ!?」
「だけというわけではない。確かにロシアからトルコまで一カ国ごとに語源を調べはするが、そこから神学医学民俗学宗教学におけるそれぞれの吸血鬼像を追求していく」
「うわ止めて良かった。もう意味わかんないし」
「意味はわかるだろーが。名称と意味・実体との関係を調べるんだ。原語を収集し、その集積の中から筋道を見つけ出す」
「……は?」
「…フェンリッヒよ、もう少しわかりやすく言ってやれ」
「閣下」
「例えば河童だ。知っているな小娘?」
「あ、うんうん。カッパはわかる。頭にお皿のっけてて~、緑色のやつでしょ。キュウリが好きなのよね」
「まぁ、間違ってはいない。がしかし、河童というのは学術用語だ」
「へ?」
「元は川に棲む童子形の水怪を指す方言の一つだった。それを、この類を表す名称としたのだ。ここまで大丈夫か?」
「…あー、あ、うん……」
「この水怪は日本全国に知られている。その行動も、子供を溺れさせたり、相撲を取ったり、馬を水中に引き入れたりするなど、ほぼ共通するが、名称はカワタロウ・カワコ・メドチ・エンコなど、ほとんど地域により異なる」
「ぷっ、カワタロウって、超安直なんですけど!」
「小娘、閣下がお前のために説明してくださっているのだ。真面目に聞け」
「対して、ウブメという妖怪を知っているか?漢字で書けば「産女」だ。カッパと違い、名称はどの地域でもほぼ統一されてる」
「へぇ、わかりやすくていいじゃない」
「だがその意味は地域によってまちまちだ。赤子を抱いて現れ通行人に抱かせようとする霊のほかに、海難者の亡霊や船幽霊を指す地域、怪鳥と考える地域もあるのだ」
「ええと、カッパと逆パターンってこと?」
「うむ。名称が同一であっても、意味されるものには大きな違いがある。民俗学を研究する上で、こういった名彙アプローチは重要だ」
「う、うーん……」
「系統的に変遷が辿れそうではあるんですけどね」
「ごめんフェンリっち、こんがらがるからちょっと黙ってて」
「あ!?」
「その語源を調べるってのに意味があるのは何となくわかったけど…。全部挙げられたって付き合いきれないわよ!もっと面白いなって思ったとこだけ箇条書きにして!」
「お前なぁ」
「だってずーっと外国語だけ聞かされるんでしょ!わけわかんないもん!語源を調べた結果わかったってことだけで十分よ!」
「…まあ、単調だからな。小娘の言うことにも一理あるぞ、フェンリッヒ」
「……は。閣下がおっしゃるのなら、そうさせていただきます」
「うんうん!」
「そうだな…。まず、まともな人間は吸血鬼にはなり得ない」
「おいちょっと待て。なんだそれはどういう意味だ?」
「吸血鬼になるのは普通人殺しなどの犯罪者や悪人で」
「こら、何事もなく進めるな!」
「ふーん。ヴァルっちって元犯罪者だったんだー」
「へっ?いや、違うぞ、これはただの伝承で」
「ねぇねぇ、そういう場合ってやっぱさ、悪いことするとこうなっちゃいますよーっていう意味も含まれてるのよね?」
「それはそうだろうな」
「じゃあ吸血鬼になるのって罰ゲームみたいなものなんだ」
「へぇ、お前にしては物分りがいいじゃないか」
「おい!!」

※犯罪者でない人も、遺骸の上を猫などの動物が越えたときや、その上に人の影が差したとき、墓穴が夜中開いたままになっていたときには吸血鬼になってしまう恐れがあります。
ほか異常出生の者、産死者などもそうです。

「それと吸血鬼は死んだときの姿だけでなく、狼や馬、猫、蝶など様々な動物の形になれる」
「あとコウモリね。それは知ってる!」
「まぁ、様々な動物になれるのだからコウモリくらい容易いだろうが、特にコウモリになるという伝承は見つけられなかった」
「え、うっそぉ!?吸血鬼といえばコウモリでしょー!」
「一番多いのは蝶になって逃げるというものだったな」
「蝶?やだヴァルっちってば乙女~」
「……だから、伝承上の話だと言っているだろうが」
「でも逃げるって、何から?」
「人間に寝込みを襲われたときだな」
「寝込みを襲われて、蝶になって逃げるって、お姫様かっつーの!」
「……」
「ねぇねぇ、他にもそういうちょっと可愛い話、ないの?」
「ヴェネチアまで卵の殻の船に乗って、好きなお菓子やボンボン、林檎や梨を買っていたが、人間が追いかけていって、悪さをしないように驚かせたという話もある」(※マジです)
「そんな!好きなお菓子を買ってただけで追い返されるなんてヴァルっちかわいそう…」
「…いや、だから、俺がそれを体験したわけでは……」
「あとは生前の家族のところにご飯を食べに行ったが、追い返されてしまったという話や、結婚式に招いてやると嘘をつかれて、遠くで待たされたままにされたという話も…」
「ヴァルっちー!!」
「ええい!伝承上の話だと言っているだろう!!」
「吸血鬼って意外と可愛いんじゃん」
「ふん。そこだけ取り出すからだろうが!言わせてもらうが、まず逃げた蝶を取り逃がせば、次の夜に村人は皆殺しにされた。ヴェネチアに出かければ、子供の血を吸う。吸血鬼に飯を食わせれば、毎晩その村に赴き村人を一人ずつ殺す!」
「……伝承上の話…だよね」
「はッどうだか」
「まぁ、吸血鬼はそもそも危害を加え、人間に畏れを与える者だからな」
「当然。それが仕事だ」
「ん?結婚式は?遠くで待ってるんだよね。やっぱり戻ってきて殺しちゃうの?」
「……」
「…あ、ずーっとそこで待ってるのね。やっぱり可哀相かも…」(※マジです)
「…まぁもういいだろう、この話題は」
「それから吸血鬼にありがちな特徴といえば、鏡に映らないというのもあるが、それに関しての伝承は1つもなかった」
「がーん!夢が崩れたわ!ヴァルっちしっかりしてよ!」
「そう言われてもな……」

※あるかもしれませんが、私は見つけられませんでした。吸血鬼について研究している方の本にも「無い」と明言されているので、恐らく無いと思われます。

「あと吸血鬼は夜、特に満月の頃に出歩くのだが、土曜日は避ける」
「え、何で?定休日?」
「土曜日に生まれたものに対しては何もすることができず、見つかると殺されてしまうというからだ。18世紀末になると、土曜日には全く活動できないという話になる。だから、土曜日生まれでないものが吸血鬼を殺せるのは土曜日だけらしい」
「へぇ…、私って何曜日生まれだろ」
「こ、殺す気か!?」
「確認だけじゃない。でもさぁフェンリっち。最初に言ってたキシローヴァ村の事件とかで、杭を刺して殺す~云々言ってたけど、ヴァルっちには無意味よね…。他に方法ないの?」
「…!?」
「寝ているところに熱湯を注いだり、溺れさせたり、寝床に茨を入れたり、墓の上で火をたく、銀の銃弾で撃つなど、だな」
「おま…簡単に言うことじゃないぞ」
「ふーん、そうなんだ」
「ほらみろ!」
「大丈夫ですよ。閣下は火属性の魔法をくらっても、銀の弾丸で撃たれても生きてらっしゃるじゃないですか」
「それはそうだが、大体寝込みを襲われるというのが気に食わん!正々堂々殺しに来い!」
「ヴァルっちを正面から殺せる奴なんているのかな」
「いないだろう」
「まぁ一般的な吸血鬼の倒し方はわかったわ。だけど吸血鬼が活動し始めてから狙われたら、もうどうしようもないの?」
「棒に火をつけて振り回せば逃げるそうだ」
「あれ、案外ちょろい!」
「……」

※ドナウ川に魚釣りに誘って、来たところを川に落として溺れさせるという殺し方もあります。吸血鬼さんは一緒に魚釣りしたかっただけなんや…(`;ω;´)

「うーん、結構面白いのね、吸血鬼!もっと怖いのかと思ってたわ」
「血なまぐさい話も多いがな。まあそのへんはイメージ通りだろうから、わざわざ紹介する必要もないだろう」
「このままだと小娘にあることないこと俺の話として広められそうだ…」
「おや、しますか?血なまぐさい話」
「…無理にする必要もない」
「なんだか既に、色々諦めてらっしゃいますね。では気色の悪い話を1つ」
「血なまぐさいではなくか?」
「吸血鬼には骨がないとされる地域もあります」
「何それ気色わるッ!」
「俺はあるぞ、骨」
「骨がなくてどうするの?どういうこと?」
「ゼリー状の血の袋で、どんな小さい穴からも忍び込めるらしいぞ。そして吸血し、殺す」
「嫌!なんか嫌!」
「だが、その吸血鬼が四十日以上生き延びると、人間の姿を取るのだという」
「じゃあ生まれたばかりのヴァルっちは…」
「…だから伝承だと何度も……。…もう好きにしろ」
「でもその状態で人を殺せるなら、人間の姿になっちゃったらもっと怖いことになるんじゃないの?」
「ふむ、四十日後、人間の姿になれば」
「なれば…?」
「妖精と歌を歌ったり笛を吹いたりして遊ぶ」
「……」
「……」
「えーと、四十日後はなんかすごく怖いことになるんだよね?」
「歌を歌ったり笛を吹いたりして遊ぶ」
「ヴァルっち…」
「そ、そんな目で見るな!」

※歌いながら登場して、人間たちに一緒に歌うよう強いてくる奴もいます。なんじゃそら。

「こんなところだろうな」
「あれ、もうおしまい?なんだっけ、語源だかなんだかのくだりに直接関係ない話ばっかじゃない!」
「キリがないと言ったのはお前だろ?それは事実だから、詳しくは触れんが、まぁ、大きく分ければ魔女、夢魔、狼男、怪鳥というところだ」
「コウモリはこの怪鳥からきているのではないかと思うぞ」
「特に狼男の特徴が出ている話は多かった。狼に変身したりだとか」
「そうなの?狼男と吸血鬼って、仲が悪いイメージなんだけど」
「さっき、四十日以上で人間の姿になるという話をしただろう?そうなった吸血鬼を殺せるのは狼だけだという。他にも狼が吸血鬼を殺せるという話がある国は少なくない。そういう話から、人狼と吸血鬼が犬猿の仲だという定説ができたのだろうな」
「土曜日しか殺せないんじゃなかったっけ?」
「そういう逸話が大半だから大きく紹介したが、実際には国どころか地域ごとに微妙に違っている。伝承なんてそういうもんだ。納得しろ」
「うーん。しょうがないか」
「で、もう終わりなんだろ?」
「いえ、せっかく語源の話に戻ってきたので、少しだけ話しましょうか」
「……」
「ねぇねぇ、魔女とか夢魔とかっていうけどー、吸血鬼って女の子もいるの?」
「夢魔は別に女と限らんだろ?男の夢魔だっている。で、魔女だが、別に語源になっているというだけで、魔女由来の地域も男の吸血鬼が一般的だ。女の吸血鬼もいるにはいるがな」
「へー!会ってみたいな~!ヴァルっち、会ったことないの?」
「さあな」
「…なんか、ヴァルっちずっと非協力的じゃない?色々教えてよ!」
「伝承では、金曜の夜に吸血鬼会議があると言いますが」
「何それ、同窓会みたいで楽しそう!…あ、でも行きたくはないかも。見つかったらやばそうだし」
「人間に見つかったら全員慌てて逃げ散っているから、大丈夫じゃないか?ちなみに、この金曜夜の集会は魔女の特徴だな」
「ええい!もうやめにしろ!」
「あとは夢魔の特徴で、丁度キリがいいのですが…」
「……」
「いいじゃんヴァルっち~。尻切れじゃなんかモヤモヤするよ!」
「……はぁ、それで終わらせろよ」
「ありがとうございます」
「で、夢魔ってサキュバスちゃんのことでしょ?それの男バージョンってことは、女の子をたぶらかすってわけ?」
「たぶらかすというより、生前の妻と寝るパターンは多いな。それで生まれた子は、吸血鬼になるか、吸血鬼を殺せる人間になる」
「あれ?奥さんとならいっか。でもそれじゃ夢魔って感じではないよねー。たぶらかしてないじゃん」
「もっと夢魔の特徴が出ている地域もあるぞ」
「あ、とうとう女の子を騙すのね!ヴァルっちめ~!」
「だから伝承だと言っているだろ!俺がいつ騙した!?姑息な手は使わん!」
「ええ、実際の吸血鬼伝承でも、騙されはしまくってますけど、騙してはいませんよ」
「へ?」
「たぶらかすのでなく、精液をエサにできる、という夢魔の特徴を引き継いでいる話は多い」
「ふーん。それってでも女の子限定じゃん。男の吸血鬼は?」
「俺はずっと、男の吸血鬼という前提で話を進めているが?」
「……」
「……」
「……え、飲むの?」
「そういう話もあるし、後ろd」
「よし、終わったな話!これで終わり!」
「……おやおや」
「ううん、こういう話が大真面目に語り継がれてるのよね…。グリム童話とかもそうだけど、元ネタは結構エロかったりするよね……」

※逃げるのでなく、「今俺ら会議中だから帰ってよ」と人間と話し合いをし始める伝承もあります。


と、全体的に面白いと思った話を取り上げました。
しかし色々な話を見ていて思ったのですが、大抵は人間が吸血鬼を殺して終わるのですよね。人間側にも被害は出ていますが。
日本の伝承では、人間がやられっぱなしな話が多いです。(昔話は除く)
なんかこういうところに国民性が出ているなぁという感じもww
そもそも日本の妖怪は自然に関するものが多いですし、そりゃ勝てないのも当然という気がしますけど…。
しかし殺されて終わる伝承が多い中で、ロシアの方では吸血鬼崇拝があります。
ウプィリupyrと呼ばれるのですが、中世ロシアでは供物が捧げられていたそうですよ。
その信仰というと、なんと仙女(ペルーン)や精霊(ヴィラ)と並ぶものだったとか…。
更に更に、なんと子供の名前の由来にしたり、貴族なんかはわざわざ改名したり、地名(Upiry、Upirow)にまでなっているそうで!
可愛い話も多いし、人間に退治されまくっているけど、やっぱり畏れさせる存在なんですね~、吸血鬼。
ちなみにupyrの語源は、スラヴ語で多分opyr、opir、で、pyrの部分は「飛ぶ」という動詞の語根per。
あるいはロシア語のparit(飛翔する)、pero(羽)。それに否定要素oがついたもので、飛ぶもの(鳥)ではないもの=コウモリと想像されます。
とすると恐らく「羽根の生えた夜の霊怪」というようなものが原意です。
「特にコウモリに変身するという伝承はない」と極端な話をしましたが、語源的にコウモリに結びつくものはありましたので、関係はありますね。
ちなみに私はヴァルっち崇拝者です。キリッ。

ここまで付き合ってくださった方がおりましたら感激です…。
ありがとうございました!
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